お前に地獄は似合わない【あとがき】

9/19発行のお前に地獄は似合わないの追加後書きです。 本書の詳細→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15961228

 

 

 

今回の話は主題であるタイムワープを起こすのに、モクマとチェズレイがそれぞれ与えられた名前と、タンバの刀が必要だった。

それがなければ運命は変えられなかったという話なのですが、二人が歩んできた人生は過酷だったかもしれないけど、二人がその人生を歩まなければ(その名を授かり、タンバとの出会い、里での育ち)が無ければ達成できなかった。

二人の過去もまた運命の中心で、過去があるから今に繋がって未来になる、みたいな話にしたく設定を作りました。

 

先日フォロワーさんに「長編の書き方について」というスペースでお話し会みたいな、私はこう書いてるよ〜という話しの場を設けていただいたのですが、そちらで話したことと内容が重複する箇所があるかと思います。

当日聞いてくださった方、ありがとうございました!

 

今回タイムワープさせるに当たって色々宇宙論について勉強したのですが、特に物理学者のショーン・キャロルさんのSomething Deeply Hiddenが面白かったです。現役で世界は複数ある!宇宙は分岐している!という考えを持った学者さんで、心強い〜私もアマフリ隕石使っていっちょタイムワープ機構の話書こ、という気持ちになれました。おそらくショーン・キャロルさんも海をこえて同人女の活力にされてるとは思っていないでしょう…。

 

宇宙論だけではあまりにバディミと離れてしまうので、マイカの伝統と絡めつつお話を作りました。特に五行思想の相剋についてはゲームプレイ時からモクマは「木」なのかなあと思っていて、その後「黙真」と分かった時にそっかぁ…と思ったのですがチェズレイが牧草地と聞いた時に「土」だ!!相剋ができる!!と考えておりました。

それに相剋で木と土は上から下なんですよね。本編でも書きましたが、星を描く相剋図において、木剋土は「落とす」ような位置関係にあってそれを活かせて個人的にワクワクしました。ちょっと五行の図が頭にないとパッと分からないかな、と不安だったのですが今の時代ググれば一発ですからね!なんとかなるっしょ!で行きました。

 

タンバの刀にアマフリ隕石が、というのも初期段階から組んでいた話で、宇宙論の勉強の側、隕石についても色々見ていたら「流星刀」なるものが実際あるらしく、1898年に長刀2振り、短刀3振りの合計5振りの隕石を使った刀があると知ってこりゃあ使える!と組み込んだものです。ただ、実際の刀に使われた隕石は鉄隕石で刀の配合は「隕鉄:玉鋼=7:3」らしく鉄が多い分、切れ味は期待できないだとか。そこら辺はロマンで乗り切ってバチバチな切れ味にさせてしまいました。フィクションですからね、好き勝手書いてええんですよ。

作中タンバの刀の刀身に「うねりのような文様」と書いたのですがそれも流星刀から来ています。鉄を使っている分そのような輝きが出るのだとか。

 

本当は隕石にもある雲母が英名では「mica(マイカ)」で、その語源がラテン語の「micare(輝く)」からきているというネタも織り込みたかったのですが、アマフリ隕石に雲母が含まれるとすると石質隕石になり、刀には不向きだよなあ…と苦渋の末、今回はアマフリ隕石は鉄隕石にしました。いつかこのネタも使えたらいいね、また隕石好き勝手する日が来るのだろうか…。

 

ネタ組の段階の話ですでに長くなってしまいました。

こんな感じのネタを練り練りしながら、ここら辺はオチでちょっと使うくらいにしておこうと思い本編を書きました。

個人的には凄く楽しかったです。今回は三日間という制約を設けて、それぞれの世界で三日間を過ごすモクチェズが大きな括りとしてありました。

ABCの章タイトル頭のアルファベットが世界線の表記になっており、

 

 

C→前半のメイン時空。一番(読み手から見て)現代寄りのモクチェズ。同道二年後付き合ってない二人。三日間のうちに初夜を迎えました。 (肉体的な怪我無し・チェズレイが短い髪をしている)

 

B→Cから見て十年後の世界。40近いチェズレイに騙される40モクマ、という話が書きたかったところなので楽しかったです。三日間のうちにチェズレイが一世一代の騙し合いをしました。 (お互い脇腹に怪我をしている。モクマは↓世界での出来事で、チェズレイはその怪我を見た上でモクマの不在の三日間を忘れないために不忘の術と称し同じ位置に傷を負う。またそれをタイムワープしてきた十年前のモクマに深読みの材料にさせる(ひどい話だよ)チェズレイの髪の長さはやや短め。C世界と同じく一度バッサリ切って伸びてるよ、くらい。これにより肉じゃがの味が違うことで同一世界ではないという説明を交えつつ、BもCも同じ運命を辿っているよと分かるようにしたかった)

 

A→タイムワープの大元の世界。モクマが死んでる時空。三日間で運命の輪を捻じ曲げました。 (チェズレイの髪は長い。一度も切っていない。気持ちを通じ合わせる前にモクマが他界したので切ることがなかった、という説明のため。肌を晒すシーンを入れられなかったため本では書いてないですが一番傷跡の多い身体という設定がありました。守り手を喪い、一人二役で世界征服を果たしたので)

 

こうやって書くととんでもない話だったなあ〜。いや本当に。

こんな話を書けるくらいアマフリ隕石とマイカの伝統はロマンに溢れています。あとやっぱり島が1000年しか歴史ないのはおかしいって。1000年て。

 

小ネタとしては、本当に小さいネタだけどB世界に飛んですぐの朝、チェズレイがクロワッサンを出すシーンがあるのですが、フランス語では三日月はクロワッサン。

日本語では「欠けた月」フランス語では「成長する月」そして英語では「新しい月」

同じ月でも場所によって言い方が変わるのが魅力的で、それでいてB世界のチェズレイはぼんやりながらこのタイムワープの真意に気付きつつある状況なので、月蝕による三日月もなんとなく予期していたための食事チョイスだった、という脳内設定がありました。

あなたは欠けたままいるのでしょうか、それとも新しく生まれ変わる?はたまた、成長されるのでしょうか。ここはあなたのいた月とは違う月、場所が変われば見え方も変わる。言葉の意味が変わるように、あなたはどうされます? みたいな。詐欺る気満々のチェズレイの問いかけ文としての役割があったのですがあの世界には英語もフランス語も存在しないので宙ぶらりんになって結局ただの食事シーンになってしまったのでした。

 

他では、BモクマがC世界に戻った後の初夜から髪を切るまでの流れは凄く気に入っています。

お風呂場で後ろをならしていたら突然モクマがチェズレイに「何指がいい?」って聞いて選ばせるシーン、書きながら突然脳内のモクマがそう喋りだしたので書いたのですがなかなか下衆だしその後のフラバとの兼ね合いもあって良いじゃん!ってなりました。あそこが癖に刺さったよ!という方いらっしゃいましたら嬉しいです。仲間ですね。

髪を切るシーンも一度は入れたかったので今回書けて満足です。

パヤ毛というか、チェズレイの不揃いな髪の部分はファントムに撃たれた後をバランス維持しているから、という妄想は自分の中のサビでした。

髪を伸ばす願掛けもありますが、髪に宿る邪気や穢れの中には「1.恨み 2.怒り 3.執着 4.嫉妬」とあるらしいと知り、いっちょチェズレイ髪切っとくべきでは?!できたらモクマの手で!と思い立った次第でございます。楽しかったです。

上の方にも書きましたがチェズレイの髪の長さが各世界のそれぞれ違いとして描写を入れました。あとは肉じゃが。そして体の怪我。そこら辺を散りばめて、話を組んだりしました。

 

入り組んだ話だったので、本編を書きながらあまりに頭の中のルートに沿った話にしすぎてなんでモクマは突然十年後の世界に飛んですんなり受け入れてるんだ?!人間もっと困惑するでしょ?!という葛藤に見舞われ、早々に「三日間で帰れますよ」という情報提示をすることで落ちつけたり(タイムリミットがわかっていればとりあえず帰る心配、という大きな思考は取り除けるかなと)その結果、三日間の制約と言うか全体を通しての一貫性を持たせられたかなと思いました。

 

それから最終章も、作家は神目線なので当初からこの世界は多世界だ!と決めておりましたが、その世界で生きる当の本人のチェズレイはそうとは分からないよな。むしろチェズレイみたいなタイプは如何なる場面でも想像して動いているよな、と思ったので同一世界のタイムワープ、という仮定もしていた(タイムパラドックスを起こして未来を変えようという作戦)くだりを入れました。それが起きないから、ああこの宇宙は多世界なのだと知るチェズレイ、みたいな。

 

鍾乳洞リプライズも書けて楽しかったです!

気がつけば手元のカード総動員!という感じで、次の本どうしようかしら。という状況ですが、何かしらまた面白い!と思ってもらえるような話を書けたらいいなと考えております。

面白さにこだわらない、ラブコメみたいなのも書いてみたいのですが、果たして需要はあるのだろうか…。ドラマCDもありますしね、本当に恐ろしいです。

 

長々書いてしまいましたがここまでお読みくださり、ありがとうございました!!

またどこかでお会いできましたら嬉しいです。

気になる二人の関係性【あとがき】

5/23発行の気になる二人の関係性の追加あとがきです。 本書の詳細→ https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15175387

モクチェズWEBオンリーから日が経ち、本当にありがたいことに感想をいただく機会もあって、そこでいただいた感想を何度も読み返しながら、ああそうなんです。そこ、そういう感じで書きました!と色々感極まることがあり、一旦ライナーノーツみたいなもの書きたいな〜と思って筆を執りました。

もしよろしければお付き合いくださいませ!

この本の発端は2月18日に呟いた https://twitter.com/hinagami69/status/1362367100174573571?s=21

「ゲリラパフォーマーニンジャさんのyoutude公式動画にピアノの格好いいBGM付いてて和音の動きがハチャメチャらしいと聞いたピアノ経験者が「いやいやwそういうのは大抵打ち込みだからw」つって実際動画みたら「生音…だと…?!一体何者なんだこのスペシャルサンクスドレミさんって…」とざわつく回」

というツイートが全ての発端でした。

140字が1000倍増えて14万字になってしまった。モクチェズの繁殖力はすごいです。水だけで地獄のように増えるミントかな?

■1話の原案になったツイートをした時はピアニストにオタク要素は無かったのですが、チェズレイは人知れず教祖になってしまうカリスマ性を持っているなあと思っていたのでピアニストには信徒になってもらいました。

終始楽しく筆が踊り、ほとんど詰まらずにかけた記憶があります。楽しかった。

ここのお話で出てくる『プリズム』が作中キーワードの一つなのと、ピアニストがヴィンウェイに行きチェズ母の演奏を聞いてメッセージ性を感じた、というところが5話の『音楽は世界共通言語』につながります。

■2話のチェズレイの部下視点の話はチェズレイに部下はいるのか…?という疑念はありつつもどうしても書きたかったので書きました。

ファントムに撃たれたあと、どうやって生き延びたんだろう。と考えてやっぱ誰かしらの手は借りたのでは無いのかな、と思い…。それをカルロという男に託しました。

モデルはゲーム本編に出てくる「つり目の黒スーツ」です。SE仮面の起点でファントムに会う直前、車の中でチェズレイに声をかけてる人です。

ここのお話では『車』を通じてファントムとモクマの相違を描きたかった…のですが、伝わったかめちゃくちゃ不安!

Twitterでも言ったのですが作中「引き算の優しさ」って書いた部分で、引き算の優しさができるのは自分が大きな数字を抱えてる人間の特権なんですよね。相手が大きい数字であれば尚更、結果がマイナスになってしまいがち。それでもモクマは抱えすぎて大きくなったチェズレイの数字をちょっと減らして軽くしてくれるんですよね。

でもときにはモクマは足し算だって掛け算にだってなるし、そうして膨大な数字で二人で世界を征服してほしいです。

チェズレイの誕生日の日、降っていた雨が雪に変わり惨劇が訪れたあの日と違い、モクマとのドライブでは雨の中暗いトンネルを通り抜けたら晴れ間が見える、みたいな対比と。何も雨が全て悪いわけじゃ無いよね、雨は川をたどり海に流れ着く、そして『恵みの雨』って言葉もあるものね、というのをチェズレイの言葉を雨に例えたりして表現したかった部分です。

■3話のパン屋の男の話はチェズレイの過去を描きたくて書きました。

あとこの場をお借りして謝罪したいことがあり、本書の一部で『ドン』と表記すべきところが『ボス』になっています。本当に申し訳ありません!!

パン屋の男はオタクピアニストの男と同じチェズに焦がれる感情を抱いているモブ男。と、少しキャラが被ってしまいそうだったので、そうならないために「チェズレイの容姿への」一目惚れ要素を強くしました。

ピアニストは「チェズレイのピアノへの」一目惚れなのであまりチェズ本人の容姿について触れないように意識していたのですが、パン屋の男はチェズの顔が好きなのでとにかく褒めちぎることが出来て原稿楽しかったです!

個人的に『ドンは思い出になるにはあまりに美しすぎる。』の一文が気に入っています。

この話もまた2話と同じく『車』を通じて、高級車でチェズレイを後部座席に乗せていたファントムと、普通乗用車でチェズレイを助手席に乗せてるモクマという対比を描きたくて書きました。あと本当にこれの一個前のカルロとの話を経てモクマは車買いましたよ、という流れを出したく…。

車体をペールブルーと表記したのは二人にとって思い入れ深い空と海の色が良いなーと思ってそうしました!あとファントムの乗ってる車は白のイメージ(濁りのない色)ですが、モクマとはその白に純色を混ぜた色(ペールカラー)が良いなぁという思いもありました。

白い車と言ったファントムが乗っている車のイメージはロールスロイスのファントムです!白いかっちょええ車。こんな車にファとチェズみたいな色男二人が乗ってたら間違いなく一般人は近寄れねえよ…。

ナレズノイとかザヴァルノイとかはロシアパンです。モクマが好きだ〜て言ってるのは一応ピロシキあたりを想定してました。

現在のチェズレイがプレーンパン以外のものを手に取る=濁りを受け入れられるようになった、という意味合いで書きました。

そしてここで出てくるダイヤモンドのブローチが1話の『プリズム』とこの先に続く『星』の繋ぎになるように書きました。(伝わっていたら嬉しいです)

■4話でようやくハスマリー公演当日になります。1−3話の要素がフル活用されて書いていてとても楽しかったです。

そしてモクマは初恋泥棒だったら良いよな〜という願望も詰め込んでいます。

1話の『音楽は世界共通言語』の繋がりでピアノを出し『きらきら星』へと繋げた話です。

これのアンサーストーリー的なポジションが5話のアーロン視点で、その流れを汲んで6話のルーク視点に行きます。

アーロン回でちょっとした潜入パートも差し込みましたが、これが一応1話のあゝ麗しのドレミさんでモクマが三ヶ月の間にミカグラ空港に頻繁に訪れていたという理由に繋がります。(ミカグラ内の悪党を追うべく数度に渡り島に来ていた)

■ 6話でチェズレイが弾いているのはモーツァルトのきらきら星変奏曲です。

(バディミの世界は現代だけど現実では無いのでモーツァルトの生まれであるオーストリアも存在しないかもしれない、と思ったので曲名は伏せました)

ピアノシーンの原稿中はずっと辻井伸行さんのピアノを聞いていたのですが、きらきら星変奏曲は「THE BEST」のアルバムに収録されてます。めちゃくちゃ格好よく軽やかかつダイナミック、そして華やかな演奏でテンション上がるのでおすすめです!

エピローグでは全ての総括、という意味合いを込めて書きました。

お供え物、多分チェズレイは馴染みないだろうなぁ〜と思ったのですが3話で出てきたナレズノイをお供えする二人がこの話のあとにいたら良いなとか思いながら書いておりました。

■本書の後書きでも書いたのですが、ルークの潜入服の背中に大きな星があるのが好きで、そしてアーロンがハスマリーのことを「紛争は絶えないが星空は悪くない」と話していたところも大好きで、この二つをリンクさせたお話を書きたい。と思って筆を執りました。

ここだけだとモクチェズから離れてしまうので、きらきら星のピアノを持ってきて、そこの英詞の「ダイヤモンドの星」というフレーズからチェズレイの持つ形見のブローチ。またそのブローチの煌めきからプリズムのキーワードへ…という一連の流れを組んで執筆しておりました。が、ちゃんと作動したか不安になって何度も原稿を読み返しました。伝わっていたらめちゃくちゃ嬉しいです。

■短編集を同人誌で書いたのが初めてで、単話完結でありながら全体を通して起承転結のあるつながった話にしよう!と決めたのは良いものの、なかなか難しく繋がりがうまくできたか不安なところ、感想で構成を褒めていただけたりして本当に安心し、何よりとっても嬉しかったです!

拙いところも多くあったと思われますが、少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。

■今後のイベントは9月のバディミプチオンリーと12月のモクチェズwebオンリーにサークル申し込みしております。

今後もまた、何かしら書いていけたら良いなと思っておりますので見かけましたら何卒よろしくお願い致します。

ここまでお読み下さりありがとうございました!