回帰新星【あとがき】

3/17発行の回帰新星の追加後書きです。

本書の詳細→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21705127

回帰新星 表紙

 

表紙用紙:サーブル160kgスノーホワイト(箔押し:つや消し銀)

本文用紙:美弾紙クリーム

使用アプリ:縦式、Goodnotes

縦式の設定:塗り足し3mm、二段組、一行文字数27、一段の行数21、フォント ヒラギノ明朝ProN W3、フォントサイズ8.5pt、行間6.0pt、上余白(天)18mm、下余白(地)19mm、内側余白(ノド)21mm、外側余白(小口)17mm

 

タイトルの回帰新星について

天体用語では再帰新星の方が主に使われている現象ですが、一般の天文好きの方が検索した時に自著が出てくるの恥ずいな…と思ったのと、回帰にした方が「回」の字の回る=巡る=円環=ループ性・エターニティと話の根幹に繋がるようで良いなと思いこちらを選びました。

今回表紙のデザインをお願いしたのはmmdesignの幌さま。

タイトル上部に線で描かれた円と箔押しの円は線の部分が衛星軌道、箔押しの円が星を表していて、連星の衛星軌道をデザインに組み込んでいただきました。お互い惹かれ合う星、と言うことで箔押しの角度によって輝きが変わるのがファイトで相乗効果のように火花を散らすルクジェミを表現…という気持ちでした。軌道の線が途中途切れているのは記憶喪失の表現で、欠けてる円にしてくださいとオーダーしました。ルークもジェイミーも記憶の欠落がある話なので両方とも一部が欠けています。

それにしても素敵な表紙だ…嬉しい…。紙のチョイスなどデザイナーさんに一任してしまったのですが、素敵なデザインと紙選び、そして箔押しの御助言等、本当にお世話になりました。

 

本の内容について

今回の本は昨年9月のTGSでルークのOf3がVルークと判明してからプロットを組み始めたのですが、Vルークの時には2枚(お父さんとルーク自身の)あったドッグタグが6ではお父さんの1枚になっているのが、なんでだろう。と考えた所が始まりでした。普通に考えるなら軍に返納したんだろうなあと思うのですが、それを二次創作ナイズした結果この話になりました。

最初期のプロット1

はちゃめちゃに字が汚くて申し訳ないのですが最初期のプロットです。喪失書けてないやんけ、恥。入れたいテーマにタグの行方・ルークの遺書・ルークが軍を抜けた理由・話のオチの要素がまず最初に頭にあったようです。

ルークの遺書はプロットの初期段階ではあったのですが、書いていくうちになくなりました。これは任務の時に毎回ルークが誰に読まれるでもない遺書を(仕事の上で必要なため)書いており、その中には全部ジェイミーとのことが書いてる。と言う話だったのですが、どうにも上手く組み込めず消えました。

最初期のプロット2

やばい本当に字が汚い。すみません。

トレモをIF世界線とするなら、システムをメタ的に取り入れて話を組みたいとなり、いくつか候補を選んだ結果のレコード機能でした。「トレモで別次元のルークのレコードを再生し続けるジェイミー、有り」と書いてあるんですけど、普通にジェイミーが孤独すぎて今読むと無し無し無し!!!!!!!!と言う気持ちになりますね。傀儡のルーク相手にレコードさせて……と言うジェイミー、あまりに孤独すぎる。嫌いじゃないけど……。

あとがきにも書いたすけべレコードもこの時いくつか案を出してるんですけど、その中にはジェイミーはレコード機能を使って、記憶を失ってしまう前のルークがしてくれたことをなぞるように行為を覚えさせていく。後々に現実のルークとトレモのルークが同一人物であることがわかり、ルークはトレモでジェイミーがスロットに記憶させていたことをやっていたのだった。とわかるみたいな流れも一応考えにはあったようです。卵が先か鶏が先か理論のようですね。

 

なんやかんや話をこねくり回して

  • 現実世界の記憶を失ってしまったルーク
  • レーニングルーム世界のスロットに記録したこと“だけ”を覚えていられるルーク
  • その間に揺れるジェイミー

という構図に落ち着きました。スロットで記憶保持、閃いた時にこれだ!!と脳汁が出たんですが、その時にスト6を立ち上げてレコード機能を確認したらスロットが8個あって

「8個分のルクジェミの記憶を書かなくてはならんのか……?」

というとんでもないネタを引っ張ってきてしまったことに気づいて絶望したのでした。

更にいうならレコード記録に辿り着くまでのいわゆる0日目も必要になるので、ど〜すんだいとここからまず9日分のネタ出しをして、その折にまた脳内で閃きのような稲妻が走りました。

「記憶に残らない幻のスロット9の思い出、欲しくない……?」

スロットにあること“だけ“は忘れないVルークというのを強調していたのは、現実ルークが記憶を失っているからこそ。はっきりと言葉に表してはいませんが作中のジェイミーは“喪失”を恐れているので、その可能性が限りなくゼロに近いVルークに知らず知らずのうちに支えられています。そのルークとの「記憶されない思い出」というのがかなり自分の中では好きなパートで、記憶を“忘れてしまう“のではなくて記憶“されない“。結果はどちらも“覚えていない“ことになるのですが、これは当人たちがその結果になることを事前に知らない・知っているという明確な違いがあり、そこの精神的負荷とお互いの心情ぶつけ合いバトル、最高〜!い〜れよ!と途中からプロットに追加。

プロット3

9日目にタグを渡すことをここで決めて、なおかつ記憶に残らないお前と初めてのキスをする。と書いてあります。セルフツッコミで(本当はセックスまでしたい…)(だめか…)と書いてあるあたり本当に独り言が得意!

結果的にセックスはおろかキスもさせませんでした。ハグ止まりです。

プロット組んでる時は記憶に残らないキス最高〜と思っていたのですが、いざ原稿で書いている内にこの時のジェイミーはトレモVルクと現実ルクは別人だと考えているので、気持ちが現実ルクに向いている状態でそんな許しはせんだろう。と、考えを改めました。あとトレモルクとジェイミーはブロマンスを描きたかったので、その点でもここは削除。それにしても最初の私はあそこでセックスパート挟みたがってたんだなと思うと人間の脳は短期間で作り変わるものなのだなと実感します。

 

そしてこのプロットの記憶喪失二段構えとまるで何かのコンボのように書いてありますが、ここもルークが記憶喪失になる話か〜と思って読んでいたら、エッ?!ジェイミーも忘れちゃうの?!と驚いてもらえたら嬉しいなあと思いつつ、書きました。

サークルカットやお品書きの見出しなどでも記憶喪失になるルクジェミ長編小説と書いていたのですが、それもルークとジェイミー両方が記憶喪失になるから。という意味合いで書いてました。

 

そんなこんなで話は佳境に入り、いくつかの伏線回収をしながら終盤に向かいます。

モブキャラで登場したテロリストの兄と足を失った弟は、ルークがトレーニングルームで語っていたいつかのショッピングモール爆破事件を起こした母親と鉄砲隊となって死んだ彼女の息子の対比です。兄弟をルーク・ジェイミー二人の側面で助けることで、ルークの腕に刻まれたかつての星も報われたら良いなという思いで書きました。

ルークはその救済の価値をしっかりと理解していて、その時隣にジェイミーがいて、こいつがいたからこそという気持ちになる瞬間、胸がスウっと軽くなって欲しかったです。年月を経ても風化しなかった父親を弔った悲しみと、どうしようもないやるせなさを抱えてきたことが徒労じゃなくなる、けどその重みがずっと胸にあったせいで、自分がそのような感情を抱いていたことになくなって初めて気がつく、みたいな。

この瞬間はジェイミーに記憶はありませんが、行動で示すその姿はルークに「オレが抱えてやる」と進言した時と全く同じで、結果的にジェイミーはきちんと約束を果たしている構図でした。

 

作中に書けなかったこととして、ルークはスロット⬛︎で起きた事を記憶していません。

あの時はスロットがいっぱいだったし、あくまでルークが覚えているトレモの内容はスロットに記録されたことのみ。それなのになぜドッグタグをジェイミーに託したかと気づいたのかは、最後のエターニティとの会話にあるようにジェイミーの記憶喪失が今回の時空の歪みの原点であることに気がついたため。です。

逆に言えば、スロット⬛︎でジェイミーに告白したことを覚えているのはジェイミーだけです。ジェイミー視点で見ると、現実世界のルークにまず告白され、そしてトレモのルークに告白され、記憶を失ったルークからも告白されかけていた、この三人とも同じルークで、つまり同一人物から三回も告白を受けていた。ということに後々気づいて「お前、マジでオレのこと好きじゃん……」となります。好きです。

 

なんでトレモでVルークとジェイミーが邂逅したの?という疑問には、Of3実装時に開発サイドでVのモデルを参考に引っ張ってきていたのが混じったバグという設定がありました。メタすぎるのでセリフとして説明するのは省きました。

溢れ話なのですが、冒頭にルークのOf3がVルークと判明してからこの話のプロットを組み始めた、と話しましたがスト6でOf3が実装されるまで本当に気が気じゃありませんでした。

万が一、スト6に実装されたOf3のルークのドッグタグが1枚だったら全てが崩壊するからです。

Of3実装前に書いてしまうしかない!と思っていたら予想よりもうんと早い昨年12月にはもう出てしまう!となり、ド緊張でデモが公開されるのを待っておりました。確か朝7時公開だった気がするのですが、動くOfの動画で真っ先にルークのタグの枚数確認して2枚だ!!よかったーー!!!!!!!!と心底安堵しました。あとジェイミーが本当にえっちだった。すごい、いまだにOf3夢か?という気持ちになる時があります。エロすぎる。

 

そんなドタバタな心境の中書き上げた話でしたが、書いてる時はめちゃくちゃ不安で、イベント前の一週間は「参加するイベントを間違えており自分しかルクジェミサークルがない夢」「一人だけめちゃくちゃ離れた場所に配置され、お買い物に行くも迷いまくって一冊も買えない夢」「自分の本が一冊も手に取ってもらえない夢」という同人女悪夢のオンパレードで憔悴しきりでした。

実際イベントではたくさんの方にお手に取っていただき、そして嬉しいお言葉までいただけたり、本当に嬉しかったです!感想も本当に嬉しいです。だいぶ趣味に走っているのですが、ストリートファイター6のルーク×ジェイミーだからこそ書ける話を自分なりに書くぞ!という思い出挑んだ一冊だったので、読んでくださった方の心のどこかに、良いなと響く部分がありましたら、これ以上嬉しいことはないです。

ここまで長い文章に目を通してくださり、誠にありがとうございます。

これからも色々書いていきたいです。